冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
(でもなんか、帰ってきた時様子がおかしかったって、ティビーとウィリーが言ってた。いつもボクにちょっかいかけに来るあいつらもすっきりしない感じでさ……なんか、ふらふら帰ってきたと思ったら、話しかけてもろくに答えもせず部屋に籠っちゃったんだって。せっかく仕事代わってやったのに~って怒ってたよ。後、最近夜あんまり部屋にいないんだって)
(そう……)
 
 不満そうな彼の話からすると、帰り道でなにかあったのだとも考えられるが……どうにも判断できずにセシリーは頬に手を当てた。

 頭半分ほど上にある彼の表情は今も堅く、目線は下を向いている。
 気まずい雰囲気で言葉もさして交わせぬまま、ある地点にさしかかった時……耳に騒がしい声が届いてきて、何事かと前を向いたセシリーは唖然となった。

「嘘……なんでこんなことになってるの!?」
(く、首が締まるっ! セシリー待ってよ!)
「セシリー、どうしたの!?」

 急にリルルのリードを引っ張って駆けるセシリー。ラケルもそれに続く。 
 人垣の向こうにあるのはクライスベル商会で、活気があるのはいつものことだが、なにかおかしい。
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