冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

ティシエルの訪問

 商会の前で騒ぎを起こしていた男を騎士団内の簡易留置所で送り届けた後、しばらくしてセシリーはラケルと共に騎士団の執務室に呼び出された。

 そこにいたのは厳しい顔をしたキースだ……。リュアンは今は席を外している。

「ラケル、今回のことは少しやり過ぎです。たいした武器も持たない民衆に魔法を使用したと聞きましたよ?」
「で、でも彼らは、私に危害を加えようとして、彼は守ってくれようとしただけなんです……!」

 庇ったセシリーの方を見もせず、キースはラケルを睨みつけたまま叱責する。

「だとしても……君ならば彼女を連れてその場を離れる方法は幾らでもあったはずです。忘れてはいませんね。魔法騎士団隊規・第八条を復唱しなさい」
「……『団員たる者、魔物もしくは魔法使用者以外の人間を対象として被害を及ぼす魔法を使うことを固く禁ず』」
「そう……我々は魔法を周囲を守ることや、悪に立ち向かう時以外に決して使ってはならない。相手が魔法を使うと確実に判断できる場合、もしくは実際に攻撃された場合を除いてね。それを理解していない者に団員たる資格は無いのですよ。副団長として、三日間の謹慎を命じます……部屋でしっかりと反省しなさい」
「……わかりました」
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