冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 見た目以上に子供っぽく頼りなげな彼女だが、こう見えて凄腕の魔道具作成師で、彼女の作る魔道具はクライスベル商会の売り上げの実に二割近くを占める。仕事熱心で工房に丸一月泊まり込むこともあるという彼女がこうして訪ねてくる時は、大抵とんでもない無茶を頼み込む時なのだが……今回はそれとも様子が違うようで、彼女はたどたどしくセシリーに話し出した。

「戻ったら使用人の人たちが騒いでて。どうしたのって聞いたら…………お爺ちゃんがっ、攫われたって……!」
「お爺ちゃんって、ルバートさんが!?」
「……詳しく聞かせて下さい、お嬢さん」

 お茶を用意してくれたロージーに礼を言うとキースはティシエルを鋭く見つめ、彼女はか細い悲鳴を漏らす。しかしセシリーが背中を撫でてやると、勇気を出して続きを話し出した。

「……い、家に、こんな手紙が届いてたんですぅ。それでお爺ちゃん、本当に待ってても全然帰って来なくて、ティチ怖くなって……。セシリーだったらなんとかしてくれるかもって……ふぇぇ」
「ちょっと拝見いたしますね」
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