冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

ルバート救出作戦

 街中を走ること十数分……辿り着いたのは、王都の南西の一角にある、割と大きめの屋敷だった。

(多分……いや、間違いないよ。ここだ……)
「この屋敷は、たしかベジエ子爵の住まいですね。ふむ……」

 キースも仕事の一環として王都にある多くの家屋敷……特に貴族の所在などは把握しているのだろう。

「で、でもどうしよう。本当にそうだとしても、入れてくれるわけないよぉ」

 ティシエルは怖いのか、セシリーの腕をぎゅっと抱きしめて震えた。
 一旦ここで救出の計画を練るのかと思いきや、キースは果断に足を踏み出し、門番に話しかけた。

「このようなときのために私たち騎士団がいるのですよ。皆さんは後ろに控えていて下さい。……失礼、私は魔法騎士団副団長のキース・エイダン。突然ですが、邸内を改めさせていただきたい」
「ま、魔法騎士団? す、少しお待ちいただきたい、一体どのような用件でっ」
「聞かずとも分かっているでしょう。不当にある人物を拘束した件について秘密裏に情報を取得しました。被害者の人命が優先されるため、王国刑法第三十二条により強制捜査権を実行させていただく。抵抗するようなら王国に背く罪人として連行させていただきますので、どうか手向かいなきよう。では失礼」
「ぐっ……だ、誰か子爵を呼んで来い! それまで引き留める」
「おっと、いけませんねぇ」
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