冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 ……それでも、彼の気持ちを受け入れることは決してできない。心までを求められた時……嬉しいだなんて思えなかったから。

(わかんないよ! どうしたらいいのか……)

 彼はとても辛そうで……そうさせたのは自分なのだ。少しでもそれを和らげてあげたいとは思う。思うけれど……多分これだけは、自分の気持ちに嘘をついて相手に寄り添うことをしてはいけない。もしそれで彼との関係が壊れてしまうのだとしても。

 気持ちを偽らず、しっかりと伝えないといけない……。頭はそう判断している……でも今は、どうしてもそんな気になれない。

「仕事、しなきゃね……」

 何もする気力が湧いてこないが、こんなことをしてばかりではいけない。まずロージーに彼とは何も無かったことを告げて、心配を掛けたことを謝らなければ。
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