冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「えっ、嘘でしょ!? も、もし今魔法騎士団が解体されたら……」
「ええ、国中に跋扈する魔物たちへの対応は非常にずさんなものになるでしょう。解体後は正騎士団にまた再編成されるという話ですが……本当かどうかも怪しいものですね。魔物の被害に遭って苦しむ人々のことなど、彼らはまるで考えてもいない」

 渋面で拳を握るキースに、セシリーは堪らず尋ねた。

「な、なんなんですかその人……! 誰なの……一体」
「その人物の名は、あなたもご存じですよ。この国で五本の指に入る程の権力者。そして、以前リュアンが懲らしめた、あのマイルズという青年の父です」
「それって……!」

 キースは、セシリーが頭に浮かべた通りの人物の名を口に出す。

「そう。彼の名はアルストリン・イーデル。イーデル公爵と言った方が通りがいいでしょうか。王都の西方……イーデル領に居を構える名門貴族の当主であり、彼が一声かければ誇張ではなく万の軍勢が動く。我々もなかなか厄介な相手を敵に回してしまいましたね……」
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