冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

太陽の聖女

 登城――人生二度目の、である。

 遠巻きには見たことのあるその巨大さには驚きつつも、しかしセシリーは今回意外と落ち着いていることができた。それは隣に居る男たちのおかげだ。魔法騎士団・団長リュアンと副団長キースに挟まれ、場違い感は拭えなくとも、なんとか伯爵令嬢の面目は保てそうである。

 ファーリスデル王城はガレイタムとは違って内装も外観も白色な、綺麗な城だ。
 ガレイタムの王宮が仮に豪壮と形容するならば、こちら華美という言葉がしっくりくるだろうか……そんな麗しい雰囲気の建築物。衛兵の身体検査を受けた後、面会予約を確認した上でひとりの侍女へと案内され、招かれたのは右も左も煌びやかな一室だった。

「リュアン・ヴェルナー様御一行をお連れいたしました」
「うむ、入っていただいてくれ」

 気品のある男性の声が響き室内に招かれると、そこには一度顔を合わせたことのあるレオリン王太子と、もうひとり華やかな印象の見知らぬ女性が立っており、明るい笑顔を向けてくれる。

 いや……かつて一度、しかもごく最近セシリーはこの人を見かけている。王太子の婚約者並びに太陽の聖女であらせられる、フレア・マールシルト様だ。
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