冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 次いで入室した王太子が男性の隣に立つと、こちら側を済まなそうな目線で一瞥してきた。彼は今回中立の立場として進行役を務めなければならなくなったとのことだ。

 そして厳かに開始の宣言が男性の口から述べられた。

「うむ。余がファーリスデル王国第十五代国王ファルド・エイク・ファーリスデルである。皆の者、我が城へよく参った。そなたらの顔と名前は聞いておるので、挨拶はよいぞ。話を手短に済ませてしまおう。では、第三者であるレオリン、双方の主張を説明せよ」
「ハッ! では、そちらのイーデル公爵の求めから――」

 以下がレオリンが読み上げた訴状の内容だ。

 ――イーデル公爵は公衆の面前で嫡男マイルズ氏が侮辱を受けたことにより、ファーリスデル魔法騎士団団長リュアン・ヴェルナー氏の身辺を調査した。

 すると多数、暴力的犯罪の疑いが浮かび上がり……そのような人物が国家を象徴する騎士団に籍を置き続ければ、いずれ我が国の信用を失墜させる事態にもつながりかねないと憂慮したのだという。
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