冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 そしてその後のマイルズの行いこそ……報復のためにセシリーとリュアンを暴行し監禁するに留まらず、クライスベル商会に打撃を与えるべく支配人である男性を誘拐。フォルアンサム男爵や市民と共謀して店舗内外で恫喝行為を働き、それを隠蔽するために父親であるイーデル公爵に働きかけ騎士団や法務省に圧力を掛けさせるなど非常に悪辣であると説明。

 マイルズ個人の行動もさることながら、実子である彼を優遇し、有りもしない罪を造り上げて他者を陥れるような行為をする者が国家勢力の枢軸に存在することを許すべきではない。断固抗議する――。

 王太子による文章の読み上げはそう締めくくられた。

 全員の前で語られた訴えの内容を頷きながら聞いていた国王は、やや渋い顔で左右を見渡す。
 
「ふむ……双方の主張を聞いても見事に食い違っておるな。この状態ではどちらが正しいか判断しかねる。明確な論拠を示すがいい」

 すると一番にイーデル公爵が挙手し、発言を求めた。
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