冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「よろしければまずは私から」
「どうぞ」

 レオリンの許諾の声に、公爵は立ち上がると慇懃にリュアンを手のひらで示して告げる。

「本日はそこの彼、リュアン・ヴェルナーにかつて暴行や脅迫を受けたという証人を多数連れてきております。内容は添付した書面にまとめておりますので確認願いたい。酷いものでは全治数か月で今も後遺症に苦しんでいる人間もいるとのことだ。彼の凶暴性は明白に証明されております」 
「それに彼は、公衆の面前で私が公爵の嫡男として不適格で脳無しだなどと侮辱し、私の腕を捩じり折ろうとしたのですよ! とんでもないやつです!」
(そりゃマイルズが私に絡んできたからでしょうが! 話の内容も曲解もいいところだし、腕だって私をあんたがどうにかしようとして……)

 連れて来ていた数人の男たちと一緒にマイルズが憎々し気に声を上げリュアンを責め立てるのを見て、セシリーはテーブルを叩いて反論したかったが、当のリュアンが自制し、黙っているのに自分が今彼の努力を台無しにするわけにはいかない。
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