冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

芽生えた気持ちと怖れ

「――どうか皆様、クライスベル商会をよろしくお願いいたしま~す!」

 その日は帰って心置きなく泥のように眠ると、騎士団の仕事を数日休ませて貰い、セシリーはクライスベル商会の信用回復に努めるべく、商会へ客を呼び込んでいた。

 多くの知人の手を借り……お客様たちの信頼を損なったことへの謝罪や、これまで行われていた抗議の内容はすべてクライスベル家を陥れようとする者たちの図り事であったこと、商会では商品の安全に細心の注意を払っていることなどをわかりやすく記載した広告を町のあちこちで配ってもらっている。この広告は店舗で提示すると割引券代わりとして使えるようにしてある。

 同時に、総合販売所内でセールを行い、大勢の客にたいしてクライスベル商会の商品を試してもらう機会を作ることができ、客足はすぐに元通りの賑わいを見せ始めた。

 今回のことでクライスベル商会は大きく資金を失ったが、それは後々イーデル公爵家からの賠償金で十分賄えるはずだ。
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