冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 オーギュストにもそこまでしなくていいと止められたのだが、今回の件には自分も深く関わっているので、最後まで責任を果たすべきだと思ったのだ。

 そして隣には、珍しく私服のリュアンがいる。キャスケットを目深に被り、ダークグレーのコートの襟を立てて目立たないように装っているようだが、スタイルのよさや雰囲気からただものでないのは伝わるらしく、無言で広告を差し出しているだけなのに……彼の元には声出しするセシリーの側よりも女性たちが群がっていた。

 一通りそれらを配り終え人だかりが捌けた頃、セシリーは苦笑交じりで礼を言った。

「ありがとうございました。でも団長自らお守に来なくても……仕事の方は大丈夫なんですか?」
「遅れは昼から取り戻すから問題ない。それよりもお前から目を離すと、またなにかに巻き込まれそうで怖いんだよ。ルバートさんの救出だって、キースに任せてればよかったんだ」
「あれはだって……友達が困ってたし」
「心がけは立派だが、親父さんや俺たちの身にもなれっての。心配なんだよ、お前が」 

 額を拳の裏で小突かれて注意されながらも、セシリー口元が緩んでしまう。最近のリュアンは本当にこちらを気遣う気持ちが言葉の端々に滲み出ていて、ついつい頼りたくなってしまう。
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