冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 でも……先々を考えると自重しなければならない気がしている。彼にはもっとふさわしい人が隣にいるべきだ。ラケルはああ言っていたが、仮にそれが本当だとしても……セシリーにはそれを受け止められる勇気が持てない。

 たまたま聖女の血を受け継いでいるだけの、なんてことのない女……それがセシリーだ。封印が無事済めば、また元の生活に戻ることになる。そうすればきっと、彼の興味も自分から薄れていくだろう。

 元王子の彼と、平民として育ったセシリーの間には、やっぱり大きな溝がある。これ以上距離を近づければ、ゆくゆくは彼が苦しむことになる。だからセシリーは突き放したくて、少しばかり反抗的な態度を取った。

「そんなこといってたら、私一人でどこへも行けませんよ。家の中に閉じこもってるの苦手だし。それに、魔法だって使えるようになったんですから、多少のことは……」
「それが慢心だとは言わない。城でも多くの人間を助けて見せたしな。でも今は駄目だって、自分でもわかってるだろ? お前に万が一のことがあってはいけないんだから。大人しく俺に守られておけ」
「はい……」
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