冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 ジョンはラケルがいないことに、幼い頃の彼の情けない話を明かそうとして夫人に窘められた後、少し言いづらそうに目線を落としてリュアンに問いかける。

「ラケルは……最近どうしていますか? 少し前からあまり顔を見せなくなりまして。どうも忙しい様子で、元弟子だからと言ってあまり構い過ぎるのもどうかと、あまりこちらからは顔を見せないようにしているのですが」

 つい数日前謹慎であったことなど言えるはずもなく、リュアンは少し間を置くと微笑んで答える。

「大丈夫ですよ。彼は若手の中でも期待の星で、自分の仕事をきっちりこなしてくれて、俺たちもよく助けられていますから。な、セシリー?」
「ええ……この間私、結構大変な目に遭ったんですけど……その時もラケルは仕事も何もかもほっぽりだして隣の国まで駆けつけてくれたんです、この人と一緒に。彼みたいな友達、望んで手に入るわけじゃないから……大切にしたいです」

 ジョンはセシリーたちの姿を見て、少し軽いため息を吐いた後、何度も頷いた。
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