冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 しんとした静寂……そして、温かい拍手がふたりに注がれた。賞賛と感動の声を方々から受けながら、笑顔で手を振りつつも、ふたりは会場から参列者たちを見渡せる一番後ろの壁へと移動する。

「「おふたりとも、ありがとうございました! 素晴らしい舞踏に会場が大きく温まったことと思います! では皆様方、これより存分に一夜の夢を楽しんで下さいませ!」」

 王太子たちの言葉に会場が湧き、我も我もと列席者が踊り始める中、手を繋いだまま自分の身体でセシリーの姿を隠すと、リュアンは静かに彼女に語りかける。視界の端の通路で、見知った人物の影が消えたが、今それをセシリーは感知できる状態では無かった。

「どうして……泣いてるんだ?」
「リュアン様……私、これで終わりにしようと思います。明日から、もう騎士団には行きません」

 セシリーは涙を拭いながら笑い、リュアンは片目を細めた。

「何を言ってる」
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