冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「だって、そうでしょう? ガレイタムの第二王子様が……私みたいなのを相手にしてちゃいけない。これからキースさんたちともっと団を大きくして、正騎士団も追い越して、皆を守るためにもっと強くならなきゃ」
「それとお前が俺たちの前からいなくなることと、何の関係がある」
「それには私が邪魔だから。そして……私があなたの傍にいたくないから」

 得意ではない嘘に、頬が引きつる。

「丁度いい区切りだと思ったんです。封印のこともうまく行きそうだし……それが終わってしばらくしたら私、父に付いて新しく開拓された領地に移り住んで、そこでお婿さんでも取って静かに暮らそうかなって。忙しいのはもう懲り懲りだから……。リュアン様ももう、ちゃんと女の人とだって踊れるでしょ? だからもう、私には構わないでください」

 それでも言い切ってセシリーは彼の腕を振り払い、走り出そうとした……。

 だが、リュアンは離してくれなかった。代わりにセシリーの体をぎゅっと抱く。

「やめてください!」
「やめない」
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