冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 突き放そうとするセシリーに、リュアンは静かな顔を向け、尋ねる。

「それは本心か? さっき俺のパートナーで居てくれるって言ったのは、嘘か?」
「……それは」
「前にも言ったが、俺がガレイタムの王子として戻ることはもう無いよ。仮に兄が亡くなったとしても、俺は継承権を放棄するつもりだ」

 リュアンは固い意志を瞳に覗かせながら告げる。

「次はなんだ? ヴェルナー侯爵家の身分か? こんなもんどうでもいい、お前が望むなら明日にでも当主に頭を下げて縁を切ってきてやる」
「冗談を言わないで……!」
「黙って聞け! 他は何だ? 騎士団長の身分か? そんなもんあの眼鏡にいくらでも譲り渡してやるよ。困っている人間を助ける方法はひとつじゃない。剣を片手に世界を巡ったっていい。お前と一緒に町医者を目指したっていいんだ。他は何だ? 後何を捨てたら、お前は傍にいてくれる」
「やめて……」
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