冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 本気の彼の目に、セシリーは慄いた。どうして彼にそんなことまでさせなくてはならないのか。そんな事を思うと、涙と共につい本音が漏れ出してしまった。

「私は、リュアン様に幸せになって貰いたいだけなんです……」
「俺の幸せ……? お前の思い描く幸せって、なんなんだ?」
「……あなたを支えてくれる立派な人と結婚して、たくさんの人に認めてもらって……いつまでも笑顔で笑っていて欲しいんです。それはきっと、私なんかじゃできなくて……」
「私なんかじゃ……か」

 リュアンは、濡れたセシリーの顎にそっと手を触れると、顔を寄せた。温かいものが唇に触れ、セシリーの息が止まる。

「……俺を幸せにすることは、もうお前にしかできないよ」

 顔を一度話した後、二度、三度とリュアンはセシリーの唇を求める。抵抗できずにセシリーはされるがままにしていた。
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