冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「全部終わったら、一緒にいられる時間を作ろう。封印がうまく行けばきっと、少しずつ団の仕事も減るはずだから」
「リュアン様と色んなところにお出掛けしたいです」
「うん。騎士団に務める内にこっちの国のことの方が詳しくなったからな……。行きたいところが有ったらどこでも案内するよ。遠慮なく我儘言え」
「……はい」

 不思議な気分だった。満たされていると言えばいいのだろうか……。ふわふわとした優しい真綿が体の周りを取り囲んでいるような……とても安らかな心持ちでセシリーは、星々と街並みの明かりを眺めている。

 盛り上がる舞踏会の演奏を背中に感じながら、ただ幸福な時間を過ごしていたセシリーの耳は異様な響きを捉えた。

 ――ビキッ……。

 非常に大きな、硬質なものが砕ける音が届いて、セシリーは不思議に思い周りを見た。もしかしたら参列者がガラス壁に体重を掛け過ぎて砕けたのかとも思ったが、さすがにこの高さの建物でそんなやわな造りはしていないはずだ。
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