冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 そしておかしいことに他の誰も……隣のリュアンすらそれに気づかず眼下の街並みを楽しんでいる。いや……。

「セシリー! あなたにも今の音聞こえまして!?」
「フレア様、はい……確かに」
「もしかして……」

 レオリンと一緒に走って来たフレアが、ひどく不審そうな顔をして上を見上げた。その後彼女はセシリーの手を引き、通路の奥へと走り出す。

「来てちょうだい! 不味いことになってるかも知れない!」
「ど、どこに行くんですか!?」
「上です!」
「う、上ってここ、最上階じゃなかったですか!? これより上なんて……」
「あるのですわ! 限られた人間しか入れない秘密の部屋が!」

 フレアは最上階の広間の一区画……その部分だけに空いた入り口に滑り込むと、薄暗い通路をひた走った。その先には階段が見え、そこには……。
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