冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

やるべきことを

 天候は、ここのところずっと晴れない。空を見れば常に薄暗い雲が包んでいる。

 乾いた細かい白砂がさらさらと地面の上を流れてゆくのは、強く奥に向かって吸い込まれてゆく空気のせいだろう。それは目的地に近づくにつれどんどん勢いが強くなっている。

 東のファーリスデルと、西のガレイタムの丁度中間で挟まれるように位置するリズバーン砂丘。

 その中心部……かつてある王国の王城があり、悪王リズバーンが封じられたというその場所へと向かって、節刻みの舞踏会の日から二日後、セシリーたちは出立した。

 馬車の隣で座るリュアンがそっと肩に手を置く。

「セシリー、あまり気負うなよ。もし失敗しても俺たちや、仲間たちがなんとかする……」
「大丈夫です、リュアン様。やれますよ、私」

 窓の外に向けていた顔を引き戻したセシリーに怖れは無く、今は笑顔が戻っている。数十名からなる少数精鋭の部隊、その真ん中に位置するこの馬車に乗っているのは彼女とリュアンだけで、全体はフレアが同行するように頼んでくれたレオリンが指揮している。
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