冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「両方とも一応単独でも効果はあるから……おそらく本来の再封印の手順だと、まず太陽の――網目の封印の方が日中に力が強まるのを利用して耐えている間に、月の石側の封印を解いて短時間で貼り直す。そして次は、月の――布の封印の方が力が強まる夜間に逆のことをする……そうして弱められた封印を張り直した後、しばらく安定するまで魔力を大きく補充してあげる。準備さえしっかりできれば、この方法で安全に封印を掛け直せたはずなの……けど」

 知的好奇心に輝いていたティシエルの顔は一瞬で曇ってしまった。

「太陽の石が破壊されちゃったから……網が弱まって以前の三分の一の強度も保ててない。布の方にも負担がかかっていつ破れてもおかしくないし、多分実際にもう綻びができてると思うの。多分どれだけ魔力があっても封印を維持することができない……お手上げの状態なんだ。仮にこれをどうにかできる方法を持っていたとしても、きっと近づくほどに漏れだした闇の魔力――瘴気に晒されて、セシリーの寿命が縮んじゃうよ……それでも、行くの?」

 涙をこらえるような顔で彼女は言った。頭のいい子だから、きっと詳細を話さなくてもセシリーの役割を理解してくれていて、引き留める言葉を掛けないでくれている……そんな気遣いがセシリーは嬉しかった。
< 712 / 799 >

この作品をシェア

pagetop