冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 誰ひとり欠けることなく一緒に帰る……それがセシリーの、いや、ここにいる全員の願い。リュアンも想いは一緒だというように、背中を手で支えてくれた。

「よし、抜けたぞ! 突き進め――っ!」

 先頭で剣を振るレオリンの下、力を合わせ魔物囲いを突破した部隊は真っ直ぐに封印の地へと突き進む。所々にできた光の膜の隙間から、中で渦巻く瘴気が噴き出し、空へ昇っていくのが見える。

 あの内部へ飛び込む……それを考えただけでセシリーの心臓がぎゅっと縮む。

「大丈夫だ、俺が何が起きてもお前を守る」
「はい……」

 リュアンの力強い宣言にセシリーが強く前を見据えた時――。

「あ、あれはっ!?」

 兵士のひとりが大きく叫んだ。瘴気の発生源から、彼らの何十倍もある怖ろしい大きさの黒蛇が二頭、地面を這い進んでくる。
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