冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
(ふふっ、魔法騎士とはこういった方たちなのね~。賑やかでなんとも楽しそうな……)

 もちろん親子の方も負けてはいない。娘にいくらどつかれてもめげないオーギュストに苦笑しつつ、成長したセシリーの姿に、エイラはこんな気忙しくも心躍る生活の終わりが近づいていることを実感する。もうセシリーも、子供ではないのだ。

(いつまでもこのままではいられないわよね……)

 胸の痛みは寂しさのせいだと割りきり、エイラは両手が塞がる同僚たちのために扉を開けた。セシリーを思うならば、姉替わりとして付き合う人間を見定め、忠告してあげる義務はあるのかも知れない。しかしオーギュストのお墨付きもあるなら心配は無いのだろう。

 愉快そうな彼らなら、セシリーともきっと気が合うはずと、勝手に納得したエイラは応接間を外から覗きながら、ゆっくり扉を閉じてゆく。

(御嬢様~、子どものような殿方たちのお相手は大変でしょうけど、どうか頑張って下さいませね~……)
「私、絶対に嫌ぁぁぁぁぁ――――!」

 外まで響きそうなセシリーの絶叫はそうして、パタンという開閉音と一緒に静かに途切れた。
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