冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 リルルの声が徐々に弱々しく……たどたどしいものになってゆく。

「ごめん、ラケル……もうそろそろ、時間みたいだ。僕と一緒にいてくれてありがとう。どうか、見つけてね……皆と幸せになれる方法を。それじゃ……バイバイ」
「リルル……リルル? ああっ、い、逝くなっ! 僕は……僕は……!! うぁぁぁぁぁ――――!!」

 ラケルは、もう言葉を返さなくなった白狼の体に顔を埋めるように泣き崩れた。

 何年間も兄弟同様に暮らしたリルルとの最後の別れ。
 
 彼の命を自らの手で断ってしまった……そんな途方もない苦しみが、彼を襲うはずだった。
 だったのだが……。

(――なんちゃって)
「…………は?」

 ラケルは、しばらく白狼の体に深く埋めていた顔をがばっと起こし、リルルの顔を見た。
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