冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「…………む」
「リルルの言う通りだぞ。俺がもし、お前の命をあのまま奪っていたらと思うと……。お前のさっきの苦しみを、俺がそのまま受けていたんだ……考えてもぞっとする」

 リュアンと共に真面目に叱られ、ラケルは頭が冷えたのか……肩を落とし、素直に謝罪する。

「そう、ですよね……。謝って済むことではありませんが、申し訳ありませんでした。僕は……あなたまでか、多くの人をまでを殺めようと……」
「幸い未遂だ。リルルのおかげでな」
(感謝してよ? 本当に世話の焼ける弟だよ……)
「……弟? 弟はお前の方だろ?」
(何だと……? ボクはこう見えてお前よりもっと長い時間生きてるんだからな!)

 取っ組み合いになりそうな一人と一匹を、リュアンが止めた。

「そこまで! ったく、いい加減にしろ……行くぞ、今は兄弟喧嘩なんかに構ってる暇は無いんだ!」
「そうだ、セシリーを……いや」
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