冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 それを最後に、リルルは預けてもらっていた月長石の髪留めを口で拾ってリュアンに返すと、その場に座り込んだ。それをじっとみつつ、ラケルは指を突き付けた。

「ちゃんと待ってろよ……リルル。お前とは話したいことがたくさんあるんだから。勝手に故郷に帰るとか、無しだからな」
「ウォン!」

 声を届けられなくなったリルルは狼らしく元気に返事を返した。リュアンはレオリンに相談し、二頭の馬を借りて先行することを告げると、ラケルと共に瘴気の元である封印の地へ向かってゆく。

 それを見送り、しばらく尻尾を振っていたリルルに、レオリンが歩み寄って並んだ。

「行かなくてよかったのか?」

 彼がそう言うと、リルルは嬉しそうに一鳴きし……レオリンはそうか、と頭を撫でる。ふわり……その尻尾の先からは、彼の毛並みと似た、雪のように白い光が浮かび始めていた。
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