冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「――……先に誓っておくよ、セシリー。だから、戻って来てくれ……ずっと待ってるから。いつになっても、どんな姿でも、お前だけを……」

 嬉しくて……嬉しくて……彼の胸に飛び込みたかった。
 でも、それはきっと……そうできるのはずっと先のことになるのだろう。

「もしかしたら、お祖母ちゃんになってるかも」
「それでも」
「犬とか猫とか、鳥とかお魚さんになっちゃってるかも」
「なんでも。……きっと、目を見たらわかるよ。お前みたいに可愛いやつ、他にいるもんか」

 リュアンはそっと目元を拭うように、セシリーの顔に手を伸ばした。
 そこで気づいた……決して泣かないつもりだったのに、いつからか、温かいものが頬を濡らしている。

 弱々しい音を立て、太陽の石が砂となって崩れた。元の世界に還ったのだ。

 セシリーの輪郭も朧げになり風が吹けば消えてしまいそうなくらいに、もう儚げだ。
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