冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 慌てて確認するリュアンにラケルは冷たく告げた後、どさりと副団長席に腰掛ける。あれ以来、ラケルは少し性格が暗くなった……根本的な優しさは変わっていないはずなのだが、素直さや純粋は失われてしまったように感じる。後、ちょっと愚痴っぽくなった。

「僕、ちょっとキースさんの後釜に据えられたこと後悔してますよ。あの人、どうやってこれだけ大量の仕事をこなしてたんだか……。魔物の被害も少しずつ減って来てるっていうのに」

 ラケルの目には薄い隈が浮かんでいる。彼はつい半年前にキースに代わり副団長職に就いたばかりだ。だが、リュアンや他の団員がカバーしていても、多岐にわたる仕事は彼の背中の上に重くのしかかっている。それだけ、この団に置いてキースの存在が大きかったという事だ。

 十九になった彼は少し背が伸び、顔だちも大人びて来ている。中々の美男子に育ち、今では彼も多くの婦女子たちの視線を欲しいがままにしているようだが、もっとも本人はそれに構ってやるつもりもないらしい。彼の首にいつも巻かれているスカーフが誰から送られたものなのか、噂する者も多いという。

「おい、そんな事言ってると……」
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