冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「――そうそう。私が現われますよ!」
「いっ!?」

 次いで扉を開け放ち、現れたのは、白い制服に身をキースだ。
 ラケルが手に持った書類を落としそうになり、慌てて抱え直す。

「お、驚かさないで下さいよ! キースさん! このタイミング……戻ってきた時に何で声を掛けてくれなかったんですか!」
「いや~その方が面白いかと思ってね。御機嫌よう諸君! 仕事は捗っていますか?」
「ぐっ……まあまあです」

 意地を張るラケルに忍び笑いを漏らした後、リュアンは立ち上がり、キースの肩を叩いた。

「相変わらず間がいいな、キース。どうだ? 向こうで苦労してるんじゃないか?」
「はっはっ、あなたがたやんちゃ坊主に比べたら、向こうの彼らなど借りてきた猫のようなものですよ。とはいえ、大所帯は目の届かぬところも多いですがね。それでもどうにかなっています」
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