冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
 そう、キース・エイダンはリュアンの成長を見届けた後、この度正騎士団団長に返り咲くことになった。封印の際に素早く魔物たちの被害に対応した功績を認められ、王太子……今や国王に即位したレオリンに推挙されたのだ。先代の正騎士団長が偽イーデル公爵と癒着していたことも原因の一部で、今ではそう言った貴族との悪しき関係を正すため辣腕を振るっている様子だ。

「ただ、向こうではゆっくり茶を嗜む相手にも恵まれなくてね……おっと」
「開けて~。へっへぇ……今日は奮発しちゃった。お茶、入れて来たよ」

 軽いノックをして扉を開けてもらい、大きなトレイを両手持ちにして入って来たのはロージーだ。そこにはお茶とケーキが並んでおり、キースはたちまち笑みを深くする。

「いい香りだ。これは……」
「あんたの言ってたなんちゃらプラチナムよ。メイアナさんから分けてもらったんだ」

 自慢げに彼女は、応接テーブルに集まった三人の前にお茶を置いてゆく。そして自分もキースの隣に座った。

「では……ご相伴に預かりますか……。……うん、美味い。腕を上げましたね」
「でしょ~。色々教えてもらってるんだから」
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