冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~


 早朝に出立して数時間。日差しは高く、もう正午はとっくに過ぎていた。

「少し遅くなってしまいましたか。もしかしたらセシリー嬢を待たせてしまっているかも知れませんね。急ぎましょう」
「チッ。正騎士団の奴らがごねるから……」

 本日キースとリュアンは王宮にて開かれた緊急の会合に出席していて、たった今魔法騎士団へと帰りついたところだ。名目は『ファーリスデル王国の防衛体制に関しての会合』というもの。

 政府高官も出席しており、仰々(ぎょうぎょう)しい名前が付けられたこんな会議であったが、実際の内容の大半は魔法騎士団に対する魔物への対応の催促や当てこすりがほとんどで、政府の協力や増加する魔物たちへの対抗策は何も得られなかった。ただただ時間を浪費するだけとなった、そんなふたりの肩は重い……。

 どうせ、高官たちもあえて目に見えた問題を突くことで、自分たちの不祥事から目を逸らさせたいだけなのだ。それには正騎士団よりも、近年発足したばかりでまだ大きな発言力のない魔法騎士団の方が槍玉にあげやすい。完全に舐められているのは明らかだった。
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