冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~
「どうぞ。その、この間はごめんなさい」
「…………ふん」
(やりすぎたかな……)

 あれからセシリーはリュアンとろくに会話もできずにいて、ふたりの間にはいつも非常にピリピリした空気が流れている。せっかくロージーの許可が出たため、本日からここでちゃんとした昼食が出せるようになったのだし、もう少し嬉しそうな顔をして欲しいものなのに。

 ――前任者が辞めて以来、ロージーが他の仕事で時間が取れなかったのと、料理があまり得意ではないという理由で、団員はすべて外に食べに行くか非常用の保存食を(かじ)ってもらうしかなかった。

 あまりにも味気ない食事は、日々体力を使う魔法騎士団員から改善要求の嘆願書(たんがんしょ)が挙がるほどだったので、これではよくないとセシリーの加入を機に、まずはきちんとした食事を提供することが決定されたようだ。今日はお試しということであまり多くの人数は集まっていないが、上手く軌道に乗れば利用しようという団員はどんどん増えるだろう――。
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