6月、高嶺の花を摘みに
ゆいとは確実に死んでいったじゃないか。

それも、私の目の前で交通事故。

血が飛んで、その少しが私にかかって、周りの人が私を置いてゆいとをどこかに持って行って。

気がつけばお葬式もしていた。

何より、私はこの目で見たのだ。

ゆいとの“骨”を。

「俺、死んだんだけどさ。今は幽霊みたいな感じで生かせてもらってて」

「どういう、こ」



「ひよりに、会いたくて」



何よりも響いて、耳の奥でぐわんぐわんして。

――「ひよりに、会いたくて」

もしもこの人が本当にゆいとだったら。

今この瞬間で、私の恋を終わらせることができたかもしれない。

でも、突然すぎて私にはそんな切り替えができなかった。

むしろ、ひよりに会いたくて。それが胸を締め付けて、思い出させて、また恋心を芽生えさせようとして。

……嫌い。

だよ。

   *
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