6月、高嶺の花を摘みに

カウンター席

あの日、あの男にぶつかられてから一週間と数日がたった日。

私は唐揚げの定食屋に来ていた。

あの日と一緒なのは、今日もまた雨が降っているというだけ。

今日はあの日よりも雨の降り具合が柔らかいし、悲劇的な雰囲気もしない。

逆に、あの日の雨に悲劇を感じたかと言われたらまた別だけど。

そしてそれから、あの駅に雨の日は使わなくなった。

また罪をかぶせてきたらと思うも身体が震えそうだ。

もうご勘弁。

絶対にあんな思いは嫌だと雨の日はわざわざ少し遠い隣の駅まで歩くようになった。

6月の雨の多いこの月。

本当、意味のわからないことをされたものだ。
< 3 / 12 >

この作品をシェア

pagetop