6月、高嶺の花を摘みに
「ゆい、と……」

「ん?」

「……私をここまで連れてきて」

そうだよ、イラつくんだ。

何初対面も同然のこんな奴の家に連れ込まれているわけ。

「……一体何したいのよっ!」

すると彼はふぅっと息を吐き、その息が私の耳に少しかかったことでくすぐったくなる。

「ひよりはさ、マジで俺のこと覚えてないんだ?」

「は? 駅でぶつかっただけの関係」

「はは……」

突然笑い始める結人。

「お前の幼なじみは誰だよ」

「幼な、じみ……?」

「お前の幼なじみの名前、思い出して言ってみろよっ」

声を荒らげて、さっきからころころと表情を変える。
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