元彼専務の十年愛
*
親善試合が終わり、7月に入ったばかりの頃だった。
あの日は朝からだるくて少し熱っぽい気がしていたが、授業はあるし部活にも出なければならない。
夏休み前にまた交流試合を控えているのだ。
キャプテンなんだから、みんなが頑張っているのに俺が休んでいるわけにはいかない。
自分を奮起させていつも通り登校し、授業に出て、部活に励んで一日を終えた。
けれど、家に帰るなり張り詰めていた糸が切れたようにリビングで倒れこんでしまった。
…おかしいな。
部活では動けていたし、学校からここまでちゃんと帰ってこられたのに。
室内は蒸し暑く、目が回って身体に力が入らない。
近所とはいえ、同じように部活で疲れている隆司に頼るのは悪い。
自分でなんとかしなきゃ。なんとか…
意識が朦朧としていく中、ポケットの中のスマホが音を発した。
それを取り出すと、写し出された画面には『有沢紗知』の文字。
部活のグループアプリで繋がってはいたが、個人的に電話がくるのは初めてだった。
『もしもし、先輩。お疲れ様です』
「有沢、どうした?」
『あの、勘違いだったらすみません。部活中ずっと体調が悪そうに見えてて。大丈夫ですか?』
なぜかホッとした。
帰宅した時とは別の意味で、張り詰めていた糸が切れた気がした。
「有沢、ちょっと、ヤバいかも…」
『え?今どこですか?おうちにいますか?』
彼女の慌てた声が聞こえたのを最後に、意識が途切れた。
親善試合が終わり、7月に入ったばかりの頃だった。
あの日は朝からだるくて少し熱っぽい気がしていたが、授業はあるし部活にも出なければならない。
夏休み前にまた交流試合を控えているのだ。
キャプテンなんだから、みんなが頑張っているのに俺が休んでいるわけにはいかない。
自分を奮起させていつも通り登校し、授業に出て、部活に励んで一日を終えた。
けれど、家に帰るなり張り詰めていた糸が切れたようにリビングで倒れこんでしまった。
…おかしいな。
部活では動けていたし、学校からここまでちゃんと帰ってこられたのに。
室内は蒸し暑く、目が回って身体に力が入らない。
近所とはいえ、同じように部活で疲れている隆司に頼るのは悪い。
自分でなんとかしなきゃ。なんとか…
意識が朦朧としていく中、ポケットの中のスマホが音を発した。
それを取り出すと、写し出された画面には『有沢紗知』の文字。
部活のグループアプリで繋がってはいたが、個人的に電話がくるのは初めてだった。
『もしもし、先輩。お疲れ様です』
「有沢、どうした?」
『あの、勘違いだったらすみません。部活中ずっと体調が悪そうに見えてて。大丈夫ですか?』
なぜかホッとした。
帰宅した時とは別の意味で、張り詰めていた糸が切れた気がした。
「有沢、ちょっと、ヤバいかも…」
『え?今どこですか?おうちにいますか?』
彼女の慌てた声が聞こえたのを最後に、意識が途切れた。