元彼専務の十年愛
彼女の誕生日を知ったのは、マネージャー同士の会話が偶然聞こえてきたからだった。
告白して振られて気まずくなるのは困ると思って躊躇していたが、彼女を狙っているサッカー部員が何人かいるのを俺は知っていた。
誰かに取られるくらいなら、この際勢いづけて言ってしまおうと決めたのだ。
その日、彼女は偶然にも鍵当番で残っていたため、校門脇で彼女を待った。
告白されたことはあっても、自分から告白するというのは初めての経験で、とんでもなく心臓が暴れた。
今まで告白してきてくれた子たちはこんなふうにドキドキしながら勇気を振り絞っていたんだと思うと、あっさり振ってしまっていたのが申し訳ないくらいだった。
「高瀬先輩?」
昇降口のほうから不思議そうな顔をして歩いてきた彼女に「あのさ」と声をかけ、校門に寄りかかっていた身体を起こす。
その勢いのまま口にした。
「俺と付き合ってほしいんだけど」
目を丸くした彼女が固まって沈黙し、不安に駆られた。
やっぱり言わないほうがよかっただろうか。
彼女の性格上、今後気を使わせることになるのは間違いない。
かと言って今さら、冗談だよ、なんて言えるわけが…
マイナスな考えを巡らせて取り繕う言葉を探していると、彼女はなぜかキョロキョロと周りを見回した。
「あの、これドッキリとか…みんなどこかで見てたりするんですか?」
不安げな顔をして真剣に言うから、吹き出して笑ってしまった。
こういう純粋なところも、彼女の可愛いところだ。
おかげで緊張はすっかりほぐれ、恥ずかしげもなく自然と言葉が紡がれる。
「俺、有沢のことが好きだよ」
再び目を丸くした彼女が、みるみるうちに目を赤くして泣き出した。
「どうしたんだよ」
慌てる俺に、彼女は鼻をすすりながら涙声で言った。
「私も、先輩のことが好きです…」
あのとき、実は俺も少し泣きそうになったことを、彼女は知らない。
告白して振られて気まずくなるのは困ると思って躊躇していたが、彼女を狙っているサッカー部員が何人かいるのを俺は知っていた。
誰かに取られるくらいなら、この際勢いづけて言ってしまおうと決めたのだ。
その日、彼女は偶然にも鍵当番で残っていたため、校門脇で彼女を待った。
告白されたことはあっても、自分から告白するというのは初めての経験で、とんでもなく心臓が暴れた。
今まで告白してきてくれた子たちはこんなふうにドキドキしながら勇気を振り絞っていたんだと思うと、あっさり振ってしまっていたのが申し訳ないくらいだった。
「高瀬先輩?」
昇降口のほうから不思議そうな顔をして歩いてきた彼女に「あのさ」と声をかけ、校門に寄りかかっていた身体を起こす。
その勢いのまま口にした。
「俺と付き合ってほしいんだけど」
目を丸くした彼女が固まって沈黙し、不安に駆られた。
やっぱり言わないほうがよかっただろうか。
彼女の性格上、今後気を使わせることになるのは間違いない。
かと言って今さら、冗談だよ、なんて言えるわけが…
マイナスな考えを巡らせて取り繕う言葉を探していると、彼女はなぜかキョロキョロと周りを見回した。
「あの、これドッキリとか…みんなどこかで見てたりするんですか?」
不安げな顔をして真剣に言うから、吹き出して笑ってしまった。
こういう純粋なところも、彼女の可愛いところだ。
おかげで緊張はすっかりほぐれ、恥ずかしげもなく自然と言葉が紡がれる。
「俺、有沢のことが好きだよ」
再び目を丸くした彼女が、みるみるうちに目を赤くして泣き出した。
「どうしたんだよ」
慌てる俺に、彼女は鼻をすすりながら涙声で言った。
「私も、先輩のことが好きです…」
あのとき、実は俺も少し泣きそうになったことを、彼女は知らない。