元彼専務の十年愛
7. 真実
翌日からも、颯太はいつも通りだった。
新聞やタブレットをチェックし、私はコーヒーを淹れる。
『行ってきます』と視線を合わせずに出て行き、夜は私が眠ったあとに帰ってきて書斎にいる。
今までと変わらない日々が続いていく。

隆司先輩が手筈を整えてくれて、異動の話はすぐに進んだ。
イベントが終わってしばらくはルーティーンの仕事だけにはなるけれど、本来役職もない私がこんなに急に異動になるものじゃない。
しかも引き継ぎが終わってすぐとなれば、中途半端に月の途中で去ることになってしまうのだ。
周囲は当然勘繰るだろうけれど、河田さんは何も聞かず『よほどの事情があるのよね。大丈夫?無理しないでね』と心配してくれて、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

異動までの間、颯太と顔を合わせるのはほんの僅かな時間でしかないんだろう。
私は母のために実家に帰れる。
合わないと思っていた都会暮らしからも解放される。
嬉しいことのはずなのに、日を追うごとに胸の痛みは増していく。


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