元彼専務の十年愛
16時。はやる気持ちを抑え、決意を持って社長室へ向かう。
ノックをすると返事が聞こえ、躊躇なく中に入った。
「どうした?颯太」
仕事中は眼鏡をかけている父が、それをずらして俺を見る。
俺と同じ茶色い瞳を真っ直ぐに見つめ返した。
「父さん」
父が目を見開く。
俺がこの人を『社長』ではなく『父さん』と呼ぶのは初めてだから驚いたんだろう。
俺が今したいのは仕事の話ではない。俺個人の今後の人生についての話だ。
「大事な話があります」
自分が今背負っているものを手放すのは簡単なことではないとわかっている。
ましてや、今は持株会社化に向けて動いている大事な時期だ。
俺の望みが父や会社にとって多大な迷惑と混乱を招くことになるのは間違いない。
けれど…
それでも今の俺には譲れないものがある。
人生最大の我儘を、どうか聞いてほしい。
ノックをすると返事が聞こえ、躊躇なく中に入った。
「どうした?颯太」
仕事中は眼鏡をかけている父が、それをずらして俺を見る。
俺と同じ茶色い瞳を真っ直ぐに見つめ返した。
「父さん」
父が目を見開く。
俺がこの人を『社長』ではなく『父さん』と呼ぶのは初めてだから驚いたんだろう。
俺が今したいのは仕事の話ではない。俺個人の今後の人生についての話だ。
「大事な話があります」
自分が今背負っているものを手放すのは簡単なことではないとわかっている。
ましてや、今は持株会社化に向けて動いている大事な時期だ。
俺の望みが父や会社にとって多大な迷惑と混乱を招くことになるのは間違いない。
けれど…
それでも今の俺には譲れないものがある。
人生最大の我儘を、どうか聞いてほしい。