元彼専務の十年愛
Side 隆司
*
「隆司くん」
後ろから聞こえた耳慣れたしゃがれ声に振り返ると、社長が朗らかな表情で歩いてきた。
社長はいつも、俺のことを苗字ではなく下の名前で呼んでくれる。
『佐藤』がありふれているからというのもあるだろうが、颯太の相棒ということで親しみを持って接してくれているのだ。
「社長、お疲れさまです」
「ああ、お疲れさま。少しいいかな?」
颯太と同じブラウンの瞳が俺を覗き、「ええ」と答える。
VIP階層の一番端にはラウンジがあり、南東の角になっているこの場所からはビル群が一望できる。
そこの長椅子に隣り合って腰かけた。
「有沢紗知さんのことなんだが」
「はい」
この話題だろうと思っていたから驚きはない。
むしろ、もっと早く問われてもおかしくないと思っていた。
その時は、俺には何も言えないと濁そうと思っていたが、今は正直に話そうと思う。
「彼女は颯太の学生時代の恋人だったんだね?」
「ええ、そうです」
社長は「やはりそうか」と懺悔のように呟いた。
「隆司くん」
後ろから聞こえた耳慣れたしゃがれ声に振り返ると、社長が朗らかな表情で歩いてきた。
社長はいつも、俺のことを苗字ではなく下の名前で呼んでくれる。
『佐藤』がありふれているからというのもあるだろうが、颯太の相棒ということで親しみを持って接してくれているのだ。
「社長、お疲れさまです」
「ああ、お疲れさま。少しいいかな?」
颯太と同じブラウンの瞳が俺を覗き、「ええ」と答える。
VIP階層の一番端にはラウンジがあり、南東の角になっているこの場所からはビル群が一望できる。
そこの長椅子に隣り合って腰かけた。
「有沢紗知さんのことなんだが」
「はい」
この話題だろうと思っていたから驚きはない。
むしろ、もっと早く問われてもおかしくないと思っていた。
その時は、俺には何も言えないと濁そうと思っていたが、今は正直に話そうと思う。
「彼女は颯太の学生時代の恋人だったんだね?」
「ええ、そうです」
社長は「やはりそうか」と懺悔のように呟いた。