元彼専務の十年愛
シャワーを済ませたあと、颯太が書斎で仕事を始めたため、母に電話をした。
『えっ颯太くんと?本当に?』
突飛な声に耳がキンと痛くなり、スマホを少し耳から離しながら苦笑いが零れた。
「本当。ウチの会社の役員でね、お金の援助は彼がしてくれたの」
『そうなの。それならそうと早く言ってくれればよかったじゃない』
「ごめんね。一度に言うとお母さんが驚きすぎると思って」
苦しい言い訳かと思ったけれど、興奮気味の母は気にしていない様子だ。
『颯太くんが相手なら安心だわ。お礼を伝えておいてね。立派になったでしょうねえ』
感慨深そうに語尾を伸ばす母が、電話の向こうで涙ぐんでいるだろうと思うと心が痛む。
颯太は私の家に何度も来たことがあり、母もよく知っているのだ。
『別れたって聞いた時は驚いたけど、10年経ってこんなふうに復縁できたなら、それは運命的なことね』
復縁、か。そんなロマンチックなものじゃない。
真実を知ったら母はどう思うだろうか。
『ふり』だなんて言えば、颯太の言う通り母は混乱するだろうし、ショックを受けるだろう。
半年後の『婚約破棄』のほうがずっと現実的だ。
どちらにしてもいずれ母をガッカリさせてしまうのは間違いないけれど、今はこの場を乗り切ることを考えよう。
少し話をして電話を切り、妙に疲れてそのままソファに横になった。
ファブリックの肌触りが気持ちいい。
フローリングに敷いた布団より、ここのほうが寝心地がいいくらいだ。
『えっ颯太くんと?本当に?』
突飛な声に耳がキンと痛くなり、スマホを少し耳から離しながら苦笑いが零れた。
「本当。ウチの会社の役員でね、お金の援助は彼がしてくれたの」
『そうなの。それならそうと早く言ってくれればよかったじゃない』
「ごめんね。一度に言うとお母さんが驚きすぎると思って」
苦しい言い訳かと思ったけれど、興奮気味の母は気にしていない様子だ。
『颯太くんが相手なら安心だわ。お礼を伝えておいてね。立派になったでしょうねえ』
感慨深そうに語尾を伸ばす母が、電話の向こうで涙ぐんでいるだろうと思うと心が痛む。
颯太は私の家に何度も来たことがあり、母もよく知っているのだ。
『別れたって聞いた時は驚いたけど、10年経ってこんなふうに復縁できたなら、それは運命的なことね』
復縁、か。そんなロマンチックなものじゃない。
真実を知ったら母はどう思うだろうか。
『ふり』だなんて言えば、颯太の言う通り母は混乱するだろうし、ショックを受けるだろう。
半年後の『婚約破棄』のほうがずっと現実的だ。
どちらにしてもいずれ母をガッカリさせてしまうのは間違いないけれど、今はこの場を乗り切ることを考えよう。
少し話をして電話を切り、妙に疲れてそのままソファに横になった。
ファブリックの肌触りが気持ちいい。
フローリングに敷いた布団より、ここのほうが寝心地がいいくらいだ。