元彼専務の十年愛
瞼の裏に白い光が差し、徐々に意識がはっきりしていく。
目を開けて映ったものに一瞬固まり、すぐに頭が冴えて心臓が跳ねた。
目の前には、寝息を立てる颯太の顔がある。
私、昨夜ソファにいなかった…?
ここは寝心地の悪い自室とは違う。カーテンの色も違うし、どう考えても主寝室だ。
シーツが擦れる音で起こしてしまったようで、颯太がすっと目を開いた。
「おはよう」
寝起きがいいのか眠りが浅いのか、颯太はすぐに言った。
「…おはよう。私、なんでここに…」
「ソファで寝てたから部屋に運ぼうかと思ったんだが…驚いた。フローリングに布団を敷いて寝てたのか?」
「うん。前にいたところは備え付けのベッドがあったから、ここには来客用の布団を持ってきてて」
「身体が痛くなるだろ。ベッドを買ってやろうか」
「いいよ。全然痛くないし、大丈夫」
強がってみたけれど、颯太は何か考えている様子でどこへともなく視線を向けたあと、半身を起こして枕に頬杖をつく。
「じゃあ、婚約者としての役割をひとつ」
「なに?」
「今日からここで一緒に寝てくれ」
固まる私に、颯太はふっと笑みを作る。
「襲ったりはしないよ。この部屋に住む時に大きいベッドを用意してくれたんだが、広くて持て余してたんだ。まあ、俺は出張があったり書斎にいてここで眠らないこともけっこうあるから」
「…うん、わかった」
婚約者の役割と言われたら断りようもないけれど、そもそも颯太は私に気を使って提案してくれたんだろうからありがたく従おう。
そういえば、考えもしなかった。
私たちは偽物の婚約者であり、今まで別室で眠ってはいたけれど、同じ家で暮らしているんだから颯太とそういうコトになってもおかしくなかったと思う。
けれど、同じベッドで寝ていても襲ったりしないというのは、私を女として見てないということだろうか。
いや、襲ってほしいわけではないし、そうなっても困るんだけれど…
ちらっと隣を見れば、起き上がった颯太の横顔は寝起きでも爽やかで凛々しい。
昔と変わらずモテるだろうから、相手には不自由していないんだろう。
私に対して、もうそんな気も起きないくらいに。
胸がちくりと痛み、複雑な気持ちになりながら私も起き上がった。
目を開けて映ったものに一瞬固まり、すぐに頭が冴えて心臓が跳ねた。
目の前には、寝息を立てる颯太の顔がある。
私、昨夜ソファにいなかった…?
ここは寝心地の悪い自室とは違う。カーテンの色も違うし、どう考えても主寝室だ。
シーツが擦れる音で起こしてしまったようで、颯太がすっと目を開いた。
「おはよう」
寝起きがいいのか眠りが浅いのか、颯太はすぐに言った。
「…おはよう。私、なんでここに…」
「ソファで寝てたから部屋に運ぼうかと思ったんだが…驚いた。フローリングに布団を敷いて寝てたのか?」
「うん。前にいたところは備え付けのベッドがあったから、ここには来客用の布団を持ってきてて」
「身体が痛くなるだろ。ベッドを買ってやろうか」
「いいよ。全然痛くないし、大丈夫」
強がってみたけれど、颯太は何か考えている様子でどこへともなく視線を向けたあと、半身を起こして枕に頬杖をつく。
「じゃあ、婚約者としての役割をひとつ」
「なに?」
「今日からここで一緒に寝てくれ」
固まる私に、颯太はふっと笑みを作る。
「襲ったりはしないよ。この部屋に住む時に大きいベッドを用意してくれたんだが、広くて持て余してたんだ。まあ、俺は出張があったり書斎にいてここで眠らないこともけっこうあるから」
「…うん、わかった」
婚約者の役割と言われたら断りようもないけれど、そもそも颯太は私に気を使って提案してくれたんだろうからありがたく従おう。
そういえば、考えもしなかった。
私たちは偽物の婚約者であり、今まで別室で眠ってはいたけれど、同じ家で暮らしているんだから颯太とそういうコトになってもおかしくなかったと思う。
けれど、同じベッドで寝ていても襲ったりしないというのは、私を女として見てないということだろうか。
いや、襲ってほしいわけではないし、そうなっても困るんだけれど…
ちらっと隣を見れば、起き上がった颯太の横顔は寝起きでも爽やかで凛々しい。
昔と変わらずモテるだろうから、相手には不自由していないんだろう。
私に対して、もうそんな気も起きないくらいに。
胸がちくりと痛み、複雑な気持ちになりながら私も起き上がった。