元彼専務の十年愛
船に乗り込み赤絨毯の階段を上れば、会場にはすでにたくさんの人の姿があった。
男性はお洒落なスーツ姿、女性は華やかなドレスを身に纏っていて、セレブリティなオーラを醸し出してる。
両側の窓際には白い長テーブルが設置されており、料理が所狭しと並べられて立食形式になっているようだ。
こんなところ、当然来たことがない。
未知の世界に棒立ちする私に、颯太が声を潜める。
「開会まで少し時間があるから、ちょっと挨拶して回るよ」
言葉も出ず、ただこくこくと頷いた。
颯太は窓の外を覗いていた恰幅のいい中年の男性に声をかける。
「藤島さん、お世話になります。ALPHAの神代です」
「おお、颯太くん。久しぶりだな」
藤島さんと呼ばれたその人は笑顔でポンポンと颯太の肩を叩いた。
やりとりから察するに、繊維会社の偉い人のようだ。
藤島さんは颯太の半歩後ろにいる私に気づき、颯太と交互に見る。
「颯太くんの恋人かい?」
「ええ、婚約者なんです」
ふたりの視線が私に向き、あたふたしながら「初めまして」と頭を下げる。
藤島さんは複雑そうに微笑んだ。
「きれいなお嬢さんだね。めでたいことだが少し残念だ。君が婚約したとなれば、うちの娘はきっとしょんぼりしてしまうよ。今日も本当は来たがっていたんだが」
「美玲さんにお会いできなくて残念です。よろしくお伝えください」
「ああ」
具体的に縁談の話が出ているような口ぶりではないものの、美玲さんという娘さんは颯太に気があった様子だ。
やっぱり颯太は今でもモテるのだろう。
男性はお洒落なスーツ姿、女性は華やかなドレスを身に纏っていて、セレブリティなオーラを醸し出してる。
両側の窓際には白い長テーブルが設置されており、料理が所狭しと並べられて立食形式になっているようだ。
こんなところ、当然来たことがない。
未知の世界に棒立ちする私に、颯太が声を潜める。
「開会まで少し時間があるから、ちょっと挨拶して回るよ」
言葉も出ず、ただこくこくと頷いた。
颯太は窓の外を覗いていた恰幅のいい中年の男性に声をかける。
「藤島さん、お世話になります。ALPHAの神代です」
「おお、颯太くん。久しぶりだな」
藤島さんと呼ばれたその人は笑顔でポンポンと颯太の肩を叩いた。
やりとりから察するに、繊維会社の偉い人のようだ。
藤島さんは颯太の半歩後ろにいる私に気づき、颯太と交互に見る。
「颯太くんの恋人かい?」
「ええ、婚約者なんです」
ふたりの視線が私に向き、あたふたしながら「初めまして」と頭を下げる。
藤島さんは複雑そうに微笑んだ。
「きれいなお嬢さんだね。めでたいことだが少し残念だ。君が婚約したとなれば、うちの娘はきっとしょんぼりしてしまうよ。今日も本当は来たがっていたんだが」
「美玲さんにお会いできなくて残念です。よろしくお伝えください」
「ああ」
具体的に縁談の話が出ているような口ぶりではないものの、美玲さんという娘さんは颯太に気があった様子だ。
やっぱり颯太は今でもモテるのだろう。