元彼専務の十年愛
挨拶すべき相手を探して颯太が辺りを見渡していると、後ろからヒールの音が駆けてくるのが聞こえた。
「颯太さん」
かわいらしい声に振り返ると、花柄のアイボリーのドレスを着た20代前半くらいの女性がやってきた。
「このみさん、お久しぶりですね」
「ええ。…そちらの女性は?」
彼女が顔を傾けて私に目を向ける。
「僕の婚約者です」
「は、初めまして。有沢紗知と申します」
挨拶には多少慣れたものの、言葉につっかえながら丁寧に頭を下げて名乗ると、彼女が顔を曇らせた。
「婚約されたんですね。いつの間に…」
「正式な結納はまだなんですが」
「そうですか…」
にこりと笑う颯太の顔は、やっぱり人工的で嘘くさい。
他に挨拶した相手に対してもみんなそうだったし、これは『仕事用の顔』——つまりは営業スマイルなんだろう。
「お父様はどちらに?」
「あ、今向こうで顧問をしている企業の方とお話を」
「そうですか。ではあとでご挨拶に伺いますね」
「はい…」
彼女はちらっとこちらを見てから、颯太に会釈をして去って行った。
「颯太さん」
かわいらしい声に振り返ると、花柄のアイボリーのドレスを着た20代前半くらいの女性がやってきた。
「このみさん、お久しぶりですね」
「ええ。…そちらの女性は?」
彼女が顔を傾けて私に目を向ける。
「僕の婚約者です」
「は、初めまして。有沢紗知と申します」
挨拶には多少慣れたものの、言葉につっかえながら丁寧に頭を下げて名乗ると、彼女が顔を曇らせた。
「婚約されたんですね。いつの間に…」
「正式な結納はまだなんですが」
「そうですか…」
にこりと笑う颯太の顔は、やっぱり人工的で嘘くさい。
他に挨拶した相手に対してもみんなそうだったし、これは『仕事用の顔』——つまりは営業スマイルなんだろう。
「お父様はどちらに?」
「あ、今向こうで顧問をしている企業の方とお話を」
「そうですか。ではあとでご挨拶に伺いますね」
「はい…」
彼女はちらっとこちらを見てから、颯太に会釈をして去って行った。