元彼専務の十年愛
病院に着くと、隆司先輩が夜間受付の人に伝えてくれていたようで、すんなり中に通された。
救急外来ではなくすでに内科病棟へ移っていて、エレベーターで内科病棟へと上がり、廊下の一番奥の部屋へたどり着く。
ノックをし、返事が聞こえたのを確認してドアを開けると、ベッドの前に立っていた隆司先輩が振り返った。
「先輩、颯太は…」
「医師に診てもらったから、大丈夫だよ」
ホッとして全身の力が抜け、ふらふらと歩いていくと、隆司先輩が私の肩を支えてベッドサイドの椅子に座らせてくれた。
ベッドに横たわる颯太の顔は赤く、呼吸も少し荒い。
腕についた点滴が痛々しく、それはまさに『あの時』を彷彿とさせた。
ここは病院なのだからもう大丈夫だとわかってはいるものの、心臓はずっと早鐘を打ち続けている。
「颯太が重役なんて立場じゃなければ、自宅で様子を見ててもいいくらいなんだ。ごめんね、驚かせちゃったね」
首を横に振ったけれど、言葉はうまく出て来ない。
「昼に有沢が教えてくれなかったら、颯太の変化を見逃してたかもしれない。助かったよ」
「…いえ、私が朝もっとちゃんと確認してたら…」
『何も問題ないよ』
冷たい顔が頭に浮かんで思い直し、胸がぎゅっと痛くなる。
「…ううん、どっちにしてもダメだった。私が何か言っても、きっと聞く耳を持ってくれなかった。私はもう、颯太にとって不要な存在だから…」
「有沢…」
救急外来ではなくすでに内科病棟へ移っていて、エレベーターで内科病棟へと上がり、廊下の一番奥の部屋へたどり着く。
ノックをし、返事が聞こえたのを確認してドアを開けると、ベッドの前に立っていた隆司先輩が振り返った。
「先輩、颯太は…」
「医師に診てもらったから、大丈夫だよ」
ホッとして全身の力が抜け、ふらふらと歩いていくと、隆司先輩が私の肩を支えてベッドサイドの椅子に座らせてくれた。
ベッドに横たわる颯太の顔は赤く、呼吸も少し荒い。
腕についた点滴が痛々しく、それはまさに『あの時』を彷彿とさせた。
ここは病院なのだからもう大丈夫だとわかってはいるものの、心臓はずっと早鐘を打ち続けている。
「颯太が重役なんて立場じゃなければ、自宅で様子を見ててもいいくらいなんだ。ごめんね、驚かせちゃったね」
首を横に振ったけれど、言葉はうまく出て来ない。
「昼に有沢が教えてくれなかったら、颯太の変化を見逃してたかもしれない。助かったよ」
「…いえ、私が朝もっとちゃんと確認してたら…」
『何も問題ないよ』
冷たい顔が頭に浮かんで思い直し、胸がぎゅっと痛くなる。
「…ううん、どっちにしてもダメだった。私が何か言っても、きっと聞く耳を持ってくれなかった。私はもう、颯太にとって不要な存在だから…」
「有沢…」