□TRIFLE□編集者は恋をする□
「え?」
寝ていくって言ったって、ここには狭い簡易ベッドが一台あるだけなんだけど……。
片桐は私が拡げた毛布の上を勝手に占領すると、当たり前のように私に向かって手招きした。
まさか、この資料室のベッドで一緒に寝るつもりなの?
こっちは一緒に車に乗るのでさえ気まずいから断ったっていうのに。
しかもこんな狭い簡易ベッドで二人寝るなんて、どうやったって身体が密着してしまう。
私が突っ立ったまま脳みそをフル回転させていると、片桐が私の腕を取り身体を引き寄せた。
「わ」
強引に引っ張られ驚いているうちに、私の体はすっぽりと片桐の腕の中に納まっていた。
狭い狭い簡易ベッドの上で、片桐はまるで抱き枕でも抱くように、私の体をぎゅっと腕の中に抱きしめる。
「狭いけど寝れるだろ」
「ん……っ」
片桐は私の顔を自分の胸に押し付ける様に抱きしめて、私のつむじの上に顎を乗せる。
ふわりと漂った煙草の香り。
……あ。片桐のにおいだ。