□TRIFLE□編集者は恋をする□
 

シャツの生地を通して伝わってくる、彼の体温と鼓動。
密着した片桐の身体の暖かさに、思わず身体の力が抜けた。

わ、あったかい……。

逞しい片桐の身体と、腕枕された腕の感触。そして私を包み込む片桐の匂いがすごく心地好くて、自分の身体の緊張が緩んでいくのを感じた。
冷え切った手足に一気に血が巡るような感覚。
じわりと凝り固まった何かがほぐれていくような心地よさに驚いて、思わず小さく身じろぐと、

「どうした?」

と、片桐が軽く首を傾げて腕の中の私を見下ろす。

「いや、あの……」

「ん?」

「人と一緒に寝るのって、こんなに心地いいんだなぁと思って……」

恥ずかしくて片桐の黒い切れ長の瞳から逃げる様に、顔をそらしながらそう言う。

「あぁ。俺もそう思ってた」

一瞬だけぎゅっと私を抱きしめる腕に力を込めて、片桐がそうつぶやいた。

……心地いいと思ってたのは私だけじゃないんだ。


そう思った途端、心にまで血が巡った気がした。

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