□TRIFLE□編集者は恋をする□
「仕事が遅くなったので、仮眠室に泊まっただけですから!別に何もしてないですからね!」
私は必死に言い訳をする。
「それに私幸せそうな顔なんてしてないですから。ただいつもよりぐっすり寝られただけで……」
「あら、何もしてないの?」
「何もしてないです。本当にただ一緒に眠っただけです」
「ふーん。じゃあ、平井は本気で片桐に惚れてるのね」
なにをどう解釈したのか、葉月さんは頬杖をついてうなずいた。
「いや、なんでそういう話になるんですか!」
「だって、添い寝されてぐっすり気持ちよく眠れたんでしょう?」
「……はい、まぁ」
「セックスは好きじゃない人としてもそれなりに気持ちいいけど、添い寝は惚れてる相手じゃないと、苦痛なだけじゃない。添い寝してもらって幸せ感じるなんて、完璧に惚れてるわよ」
そう言いきった葉月さんに、返す言葉が見つからずに黙り込んだ。
え、私、片桐のことが好きなの……?
混乱する私を見て、葉月さんはうふふと柔らかく笑う。
「じゃあ取材に行ってくるから」と、コートを羽織って歩き出した。