□TRIFLE□編集者は恋をする□
 

人の気持ちをこんなにかき乱しておいてさっさと退散するなんて。
葉月さんの意地悪。

そう思って唇を噛んでいると、「ふーん。添い寝かぁ……」と至近距離で声がした。

驚いて顔を上げる。そこには三浦くんが腕を組み難しい顔をして立っていた。

「酔っぱらってる時に強引に迫って来たかと思ったら、次は何もしないで添い寝かぁ。片桐さん、計算かどうかは知らないけど、駆け引き上手いなぁ」

「え?ちょっと、強引に迫って来たとか、なんで知ってるの!?」

「平井さん見てたら分かりますよ。全部顔に出てるもん」

私ってそんなに顔に出てる?
葉月さんや三浦くんが鋭すぎるだけじゃなくて?

「確かに、普段はぶっきらぼうでワイルドな片桐さんに優しく添い寝なんてされたら、ギャップにやられるよなぁ」

「三浦くん。変な事をしみじみと呟かないでくれる?」

「いや、勉強になるなぁと思って」

勝手に人の事を観察して勉強しないでほしいんですけど。

「最近すっかり寒くなってきたね。低気圧が近づいてきてるから今夜は荒れるみたいだよ」

もうこのことに触れてほしくなくて、窓の外を見ながらそう呟いてみると、

「そんな無理やり話題変えて誤魔化そうとしなくていいですよ」

自分よりもずっと年下の男の子に簡単に見抜かれ笑われてしまった。

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